大切な人の調香をするために
むしろ、その人が話している言葉の奥にあるものが調香に現れることが多いなと感じます。
たとえば、「落ち着く香りがほしい」と言われても、求めている「落ち着く」は人によって違います。
疲れているから休みたいのか。
頭の中を静かにしたいのか。
安心できる場所をつくりたいのか。
それとも、少しだけ自分に戻りたいのか。
同じ言葉でも、その背景によって選ぶ香りは変わります。
そして、クライアントが選んだ香りだけではなく、選ばなかった香りも同じだけ。
好き、嫌い。
なんとなく気になる。
これは違う。
その小さな反応の中にも、その人らしさがあります。
さらにその香りを「どこで、いつ、誰と使うのか」も大切にして、
自分のための香水なのか。
お店やホテルなど、空間のための香りなのか。
商品としてたくさんの人に届ける香りなのか。
朝なのか、夜なのか。
春なのか、秋なのか。
香りそのものだけではなく、香りが存在する「場面」まで想像して。
その人がどうなりたいのか。今の自分を表現したいのか。
少し背中を押してほしいのか。これからのブランドを香りで表現したいのか。
広がりがとても豊か。
調香は、今あるものを香りにするだけではなく、「これから」を香りにすることも。
言葉。表情。選ぶもの。選ばないもの。その人が大切にしている世界観。
とても開かれて。大切な時や、一年の始まりにも。
それらを少しずつ拾って、ひとつの香りにしていく。
「香りをきく」ということは、「話をきく」ということにとても近い。
クライアントの中にある、まだ言葉になっていないものを見つけて、香りという形にする。
大切な人の調香をするために。